コンクール後に決まって噴出するのが、
「審査結果は妥当なのか?」という問題。
特にNコンは詳細な審査結果が一般非公開なので、
よく話題になっています。
ではNコンはどういった審査をするのか?
審査基準や過去の審査講評から、
いろいろ考察してみたいと思います。
Nコンは合唱のコンクールであって、
単なる合唱コンクールではなく、
「教育的評価」が根底にあります。
規定人数が小中学生が35人、高校生が40人と
標準クラス編成人数が由来なことからも、
クラス合唱の延長線上のコンクール
ともいえるかもしれません。
Nコン審査基準の冒頭にも、こうあります。
教育事業として、参加各校の音楽活動の多様性を尊重し、演奏内容を特定の演奏技術に偏ることなく総合的に評価します。
また、第60回大会に主催者から
審査員に配られたお願いを見てみます。
(1)学校に於ける合唱の底辺を広げると同時に、合唱活動を通して、学園の豊かな音楽生活を育てることを目標としている。
(2)優れた音楽活動を示した学校を選奨、しかし技術面の過大評価はせず、技術面の吟味は当然のことながら、若干のミスなど過大評価しない。生徒の演奏態度、表現意欲に目を向ける。
※一部抜粋要約
つまり、技術はもちろん評価するが、
技術だけでなく、総合評価することが
謳われています。
このあたりが曖昧なので、
時に「審査結果がおかしい」と
騒ぎになることもある所以かもしれません。
そこで、現行の審査基準を見ておきます。
Nコン審査基準
◆教育事業として、参加各校の音楽活動の多様性を尊重し、演奏内容を特定の演奏技術に偏ることなく総合的に評価します。
観点としては以下のようなことが挙げられます。
・音程や各パートの役割とバランスに気をつけて歌えているか。
・適切な速さとリズム、フレーズを意識してまとまりのある演奏ができているか。
・美しい響きを出すよう発声が工夫されているか。
・歌詞と譜面をよく読み取って表現しているか。
・意欲と感動をもって歌えているか。
◆自由曲については選曲面も考慮して評価します。
◆伴奏つきの楽曲においては、合唱を重視して評価します。
◆課題曲と自由曲の配点の比率は1:1です。
審査に「意欲」「感動」といった
審査員の主観が含まれることも
審査結果に異論が出る要因の一つかもしれません。
これはフィギアスケートやシンクロといった
美しさを競う採点競技全般に言えることだと思います。
それでは、学校教育の現場では、
どのような目標で指導がなされているのか、
現行の学習指導要領から抜粋します。
小学校5年・6年の歌唱指導
ア 範唱を聴いたり、ハ長調及びイ短調の楽譜を見たりして歌うこと。
イ 歌詞の内容、曲想を生かした表現を工夫し、思いや意図をもって歌うこと。
ウ 呼吸及び発音の仕方を工夫して、自然で無理のない、響きのある歌い方で歌うこと。
エ 各声部の歌声や全体の響き、伴奏を聴いて、声を合わせて歌うこと。中学校2年・3年の歌唱指導
ア 歌詞の内容や曲想を味わい、曲にふさわしい表現を工夫して歌うこと。
イ 曲種に応じた発声や言葉の特性を理解して、それらを生かして歌うこと。
ウ 声部の役割と全体の響きとのかかわりを理解して、表現を工夫しながら合わせて歌うこと。高等学校音楽Iの歌唱指導
ア 曲想を歌詞の内容や楽曲の背景とかかわらせて感じ取り、イメージをもって歌うこと。
イ 曲種に応じた発声の特徴を生かし、表現を工夫して歌うこと。
ウ 様々な表現形態による歌唱の特徴を生かし、表現を工夫して歌うこと。
エ 音楽を形づくっている要素を知覚し、それらの働きを感受して歌うこと。
ある年の審査員が、
学校紹介VTRで夏休みも休まず
練習を続けたと紹介した学校に、
そういうのは好ましくない。
夏休みは合唱だけでなく、
もっと多くのことを体験して欲しい。
という趣旨を講評に書いたこともありました。
その他にも
演奏自体も素晴らしいが、
それに至るプロセスも素晴らしいのであろう。
と講評に書いた審査員もいました。
つまり、当日の演奏だけを評価するコンクールではなく、
Nコンはそのプロセスも評価対象とされている、
と言えるのかもしれません。
プロセスは審査員は目で見てるわけではないですが、
その日の演奏・生徒の歌う姿・選曲…から
その団体の普段の音楽活動を想像し、
評価の一つとして見ているのだと思います。
かといって技術をないがしろにしてもよい、
という意味ではなく、
バランスが大事なのだと思います。
審査員全員の考えが、どの年も
満遍なく一致するわけではないので、
この年は評価されたのに、
なぜ別の年は評価されないのか?
といったバラつきがあるのは仕方ないと思います。
あくまでもその年の審査員の総意である、
と考えたほうが良さそうです。
評価観点や過去の審査講評から、
私が考えるNコンで評価される音楽を考察しました。
私の願望的なものも入っていますが(笑)
- 生徒たちが受け身ではなく、自発的な音楽ができる、または自発的な音楽を作る試みがなされているか?
- 選曲は単にコンクールのためだけの選曲になっていないか?常に教師がつきっきりでなくても成立する選曲か?日頃の音楽活動のレパートリーとして成立するものか?
- 曲に合った表現や発声はできているのか?偏った音楽ばかりでなく、どの生徒の音楽的嗜好にも適う、幅広い音楽活動がなされているか?
- 練習が行き過ぎた訓練となっていないか?いわゆる学生時代だけの“燃え尽き”とならぬよう、日頃の音楽活動が長い将来に渡る豊かな音楽活動を根ざしたものとなっているか?
曲も、発声も、表現も、音楽活動も、
生徒に合ったものになっているか、
が最高の評価をもらう鍵だと思います。
今年の全国コンクールもあと一週間に迫ってきました。
全国の学生の皆さんの熱演を期待してます。



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